愛知県貨物運送協同組合連合会

事務局研修会(第2回)

平成16年10月7日開催。
 場所:愛知県トラック年金基金会館 3F 第1教室
 講師:内山吾郎氏(内山流通研究所所長)
 テーマ:トラック事業協同組合と業界

《高速道路新割引制度》

 別納制度が大幅に変わるということで心配をしておりましたが、割引率はこれまでとそんなには変わらないようです。しかし、その影響は多少なりともありそうです。9月24日に国土交通省から発表がありましたが、その内容は、まず割引はETC車に限るということで、この影響は大きいものと思われます。料金割引は全体的なものとして時間帯割引があります。これは次の3つの類型があります。

  1. 深夜割引
  2. 通勤割引
  3. 早朝夜間割引

です。そして時間帯割引を適用した後、大口・多頻度割引を受ける協同組合では、3段階の割引があります。すでにご承知のことと思いますが、車両1台の月間利用額について5千円超1万円の部分が10%、1万円超3万円の部分が15%、3万円を超える部分について20%の割引を受けます。さらに契約単位である協同組合で1台平均月間3万円を超え、かつ月間総利用金額が5百万円を超える場合には協同組合に利用総額の10%が付加されるというものです。各協同組合でもこの算式によって一度計算をしてみてください。

 こうして協同組合が契約単位として、従来と同じように新制度においても窓口になったことは評価できる反面、色々な影響も出てきます。連合会でもすでに説明会が開かれたと聞いておりますのでご承知のことでしょうが、業界内部でも「新制度においても協同組合が窓口になれたことは、組合の求心力が増したという反面、月間利用額が5百万円を超す大手の組合員は自社での利用も可能なことから組合離れを引き起こし、一方車両1台あたり月間平均利用額が3万円に満たない小規模組合員にとっては組合に入っているメリットが喪失してしまう」との声もあります。

 これまで組合事業として別納事業しかやっていなかった組合にとっては、これを契機として別納以前の本来の共同事業に立ち戻って構築し直す必要があるのではないかと思っています。共同事業としては共同販売・共同購入・共同燃料スタンド等がありますが、就中本来の組合共同事業である「共同輸送事業」を行っている協同組合はいま全国で110組合程度あります。これらの協同組合では、はっきりとしたシステムにより「共同輸送事業」を実施しています。具体的な「共同輸送事業」実施組合の事例をみてみましょう。

《共同輸送事業》

まず共同輸送事業がなぜ必要なのかを、いささか古いのですが、全ト協の資料から申し上げます。「輸送共同化のシステム化は、省資源・省エネルギー対策として国家的見地で進められてきている。協同組合では、設備の有効利用、生産の合理化の観点より、遊休車両の活用など組合内における貨物と車両の調整が行われている。融通配車は組合が窓口となって組合員相互の車両の融通を図る。共同受注・共同配車は協同組合が窓口となって荷主から注文を受け、共同で輸送を行うのが一般的である。近年は協同組合間で業務提携し、返路斡旋事業が活発に行われている。個別企業では困難な輸送を共同の組織で行うことによって、市場の拡大や開拓をし、過当競争を防止するとともに、企業の経営発展につながってゆくことが理想である」。

 また、共同輸送事業を推進するためには事務局の重要性についても触れています。「事務局の体制整備が必要である。情報交換、荷主開拓、受注、組合員への輸送量配分といった業務が必要不可欠であり、それに伴ってそれぞれの担当者が必要となり、そうした人材を持つことも重要なポイントである」。

 どういう共同輸送を、どうやって進めてゆくかについて具体的な協同組合の例によって少しご説明いたしましょう。東京にある「城南運送事業協同組合」と、埼玉県の「埼玉運輸事業協同組合」の2つの組合です。いずれも私が何回もお伺いしている組合です。

【城南運送事業協同組合】

 この組合は設立が昭和30年1月で、協同組合のはしりの頃です。「輸送は組合員の生産活動そのものであり、組合自体が営業を行うことは、競争相手になることであり、組合は組合員単独で出来ない輸送のシステム化を行い、そのコーディネーターになることである」との考えのもとに、いくつかのポイントをあげています。例えば、

  1. 組合センターが忙しい時には組合員も忙しい
  2. 運賃の計上が遅い
  3. 組合員と競合のない官公需受注の拡大強化
  4. 単一企業では受注出来ない市場の開拓
  5. 異業種との業務提携
  6. 地域住民に密着した輸送業務

等々。そしてこれらのポイントを考慮しながら、昭和45年には共同配車業務を開始しています。その運営にあたっては、「官公需共同荷受規約」「共同荷受委員会規約」「共同配車事業に関する規約」などの規約を設け、細部に亘っての徹底を図っています。成功のポイントは、諸規約の整備と周知によるキチンとした組合運営、組合員及び事務局員が「城南協同組合の組合員、事務局」であるとの意識・誇りと強力なまとまり、営業専任の事務局員に責任と権限を与えた適正な人員配置などがあげられます。

【埼玉運輸事業協同組合】

 こちらの組合は、城南運送事業協同組合ほど組合員は多くありませんが、城南協同組合さんと同様にやはりしっかりした規約を作っておられます。「組合員より拠出車両を出してもらい、組合で100%コントロールし、組合が自ら営業活動をして獲得した荷物の輸送を行っている。その運用システムは、組合と組合員間における運賃単価や作業内容、走行キロなどの種々の不公平をなくすため、『原価支配方式』を採用している。それは、組合員それぞれの拠出車両の売上によるのではなく、総売上からまず10%の組合管理費用を差し引きし、そこからそれぞれの運送業務に要した人件費・燃料費・車両償却費などの経費を組合員に支払い、その後の残高をプラスまたはマイナスに応じて各車両に均等に配分または負担を求める」というものです。これによって、組合の実績はかなりの成果をあげてきました。

 成功のポイントとしては色々あります。

  1. 保管―仕分―配送機能を備えた流通センター機能
  2. 固定した車両とドライバーの作業で荷主の信頼を獲得
  3. 意欲の高い事務局員の存在

などがあげられます。つまり、組合員が組合に対し積極的にドライバー、車両を提供したことが大きな要因といえます。実際に共同輸送の効果はどうでしょうかと尋ねましたら、

  • 輸送規模のメリット、設備購入のコスト低下など物流コストが低減した
  • 輸配送のまとめによって物流要員が削減された
  • 輸送効率が上昇した
  • 運賃ダンピング等の不当競争がなくなった
  • 荷主への過剰サービスがなくなった

との回答が聞かれました。

【失敗した組合】

 以上の2つの組合は共同輸送が成功した事例ですが、共同輸送事業実施の組合全てが成功したとは言えません。失敗した事例を見てみましょう。

 山形県のある協同組合の共同受注事業は、施設が不要で、頭脳的な活路開拓と行動力により成果があがるものとして、当初は大きな期待がかけられていました。併設している流通団地内の企業から荷物配送の発注が見込まれるだろうとのことでスタートしました。ところが共同受注する荷物は少なく、組合へは遠隔地の少量荷物ばかりで採算が取れないという事態が起き、赤字続きで1年半ほどで打ち切りとなってしまいました。調査したところ荷主からは、『自社セールスマンによる配達でなければ次の売込みが出来ない。同業他社との競争に負けるため近距離の荷物は組合には任せられない』とのことでした。 続いて、それでは青果物の配送をしようということになりましたが、今度は青果物業者間の競争により失敗してしまいました。こうしてこの組合は二度にも亘って失敗をしました。そして次は返路貨物に転換し、日貨協連の指導と斡旋、また専従者の強化によって漸く成功に至り、赤字から黒字へと転換できたのでした。

【共同輸送事業のポイント】

 私も色々な協同組合を見て回って感じたことは、このような失敗事例の教訓としてまずスタートするときに、どのように事業をやるのか、誰が責任をもって事業推進の主体となるのか等々、細部に亘っての詰めと徹底が重要であり、それが一番のポイントだろうと思っております。例えば、城南運送事業協同組合の場合でいえば、発足時より事務局職員に販促活動をさせ、事業内容に精通させています。品目等によって共同化の仕方は変わってきますのでこんな方法が良いとは一概には言えませんが、大いに参考になるものと考えられます。

 また共同配送の事業運営主体がどのような形態かをあげてみますと、次のようになります。

  1. トラック運送事業者が主導する協同組合
  2. 荷主側の共同出資による協同組合
  3. トラック事業者と荷主の共同出資による協同組合
  4. トラック事業者有志の共同出資による協同組合

 色々な運営主体による共同輸送促進の実態調査では、トラック事業主導型の協同組合はそれが得意な事業分野であり主導権は問題がないが、荷主積極型やトラック事業協業型の協同組合では運営主体が複数で、どのように組織するかが重要な問題であると指摘しています。やはり共同輸送の推進力として、リーダーシップが大きな役割を果たしていることになります。東京の東日本橋流通センターではお二人のリーダーがおられ、事業推進に精力的に尽力されたとか、東京繊維集配機構が行う共同集荷の場合では、事業推進者の荷主企業が同業者への呼びかけと参加により成功しました。また、岩手県の岩手流通センターの場合には一度失敗しましたが、その後立て直して大きく成功しました。今では組合員40何社もの第二組合を設立させるほどの輸送量を確保するまでになっています。そこに至るには、理事長さんだけでなく、事務長さんも精力的に動きまわり、組合員に対し集団への意識を強調されたり共同事業への不信感の払拭に努められました。色んな形がありますが、いずれにせよリーダーシップの重要性、即ち誰が中心となって共同事業を推進するのか、ということと共に事務局の重要性、即ち事務局が企画をしどれだけ組合員を参加させ、どこまで頑張れるかがポイントになることを強調したいと思います。

 何度も申しますが、私は全国各地の数多くの様々な協同組合を拝見してきました。その実地見聞から成功したケースにみられる共通のポイントは、

  1. リーダーシップがいかに発揮されているか
  2. 組合員の輪は十分とれているか
  3. 組合員・事務局員はヤル気がありその意思は反映されているか

ということだろうと思います。今日お集まりの方々は組合事務局の人ですので、色々ご存知でしょうし、現実にやっておられます。ぜひそうした情報なりを教えていただきたいと思います。

 最後に、以前私がお会いしたある組合の理事長さんが強く言われていた言葉をご紹介いたします。それは、「協同組合は企業体である」という言葉です。

「昨今の厳しい経営環境の中で協同組合の役割は、相互扶助の精神に基づいて小規模の企業では困難なコストの引き下げ、資材手当、需要の開拓、金融の円滑化などを協同組合を通じて解決することである。とくにトラック運送事業は、事業範囲が極めて広く個々の企業の力では解決することが困難なことが多いため、協同組合では組合員に代わって行うケースがある。このため事務局業務も広範囲となり、それに対応するスタッフも必要となってくる。また競争に勝ち抜くためには、常にコスト意識を持ち、原価を的確に把握することが必要である。中小企業等協同組合法は、協同組合はそれ自体営利を目的とするものではないが、経済的には一個の企業体であって、会社その他の企業体と変わるところはない、という観点にたってつくられている。共同事業は、それに沿って運営されるのでなければ成果はあがらない。組合員企業の指導も経済性が前提になければならない。相互扶助の精神、原動力は全て理事長はじめ事務局スタッフの双肩にかかっている」。




トップ ごあいさつ トラック輸送の話 会員紹介 商品斡旋事業 リンク SDGsへの取り組み